孤独

勇気よ

おまえが生まれ落ちたときから、おのれが、まわりと比べてとるに足らない人間であったということが、そんなにも嘆かわしいことなのか。星々を従えて太陽が昇ろうとも、今日もおまえは陰口をたたかれている。あの者らの顔つきが、そんなにも恐ろしく、また憎たらしいのか。おまえを痛めつけておいて、そしらぬ顔で呆け、蟻を踏みつけるように歯牙にかけることなく、のうのうと生を謳歌しているやつらの笑顔が、そんなにもまぶしく、許せないのか。落ちくぼんだ目の下が蜘蛛の色彩で覆われているのは、眠れないせいなのか、あの言葉が、あの顔が、忘れられないのか、離れてくれないのか、おまえの脳裏から。

ところで、やつらに天罰がくだったとして、お前は喜ぶだろうか?

おまえの慰みのために言うわけじゃないが、本当のことを教えてやろう。「やつらもおまえくらい弱いんだぞ!」。この世のなかにあって、名の知れた人間たちがのたまう言葉にやつらは周到に耳を傾ける。難破した男が岸辺を見つめるような眼差しで。時代に挑んだ偉人の箴言をすみやかに盗み取り、耳障りよく、都合のよいものだけを切り取って、学識で武装したものにありがちな、あの傲岸不遜な面構えで、やつらは華麗な衣を歴史の引き出しから見つけ出す。だがおのれが打ち勝てぬ者と接するやいなや、やつらのやすいこうべは恥じらいもなく垂れる。やつらの神が『権威』であることを覚えておけ! 時代の思潮にあって、その申し子という、心地のよい檻に囲われることで、なぜならやつらは、孤独にならずにすむ。

じつはおまえ以上に、やつらは孤独を恐れているのだぞ?

ところでおまえのたましいには、まだ勇気が残っていたはずなのだが、どうも光が弱々しい。力なく、立ち向かう強さを忘れてしまったようだ。そういう事態をなんといっただろうか。ちょっと待てよ、おまえたちの辞書には自業自得と書いてある。もちろん合っているな? いわずもがな、正しく考え、正しく行動し、正しく意見を述べることを、おまえは断じて諦めてきた。そしてあろうことか、環境と他人のせいにした。人生をおのがめがねでしか見ず、いじけきって、個人的な不幸に呆れかえるほど注目し、赤子でもかくやと言わざるをえぬほど肝を甘やかし、戦闘の本来的意味すら忘れ果ててしまった怯懦の囚人よ、もう希望には見切りをつけろ。おまえの未来にいいことはなにも起きはしない。ひとり孤立して灼熱の苦痛に身をたわめているのだから、そろそろ運命に白旗をあげて、反抗的な態度を取るのはやめにしないか、かつて偉大であったかもしれない者よ。

おのれに向かって正直になるのなら、口利きをしてやってもいいぞ、あの方に?

ありとある人間たちから疎まれ、虱のようにはじかれた半生であったこと、臭がられ、輪のなかに決して入れてもらえなかった寂寞の哀愁を、いかにして忘れられるというのだろうか。簡単なことだ。やつらと異質化することだ! みずから正しく在れ。実態をあるがままに見ろ。理解が訪れ、おまえが困苦のすえ丁重に養ってきた類い希なる共感力が、やつらのなかに同情を見いだし、やがては愛にすら変わる。おとぎ話をしているわけではないぞ。

世間は弱きものたちの群れでしかない。取るに足らない評判を恐れることなかれ。おまえが正しい存在であるのなら、おまえの顔は自信にあふれる。力強い胸は堂々と頼れる者の証しとなり、人々は目をみはる。おまえが敵だと思い込んでいる者らの陰湿さはそのときおまえに届かない。おまえは、今後いっさい、自分のことを無視しろ。おまえより、もっと激しく苦しんでいる男や女に、ひたすら手を差し伸べつづける人生を送って死ね。かつておまえが本来のすがたであったときの勇敢さ、驚くべき勇猛、あらゆる王たちがひれ伏さざるをえなかった勇気が必ずおまえに宿る。おまえは闘うために生まれてきた。その敵はおまえじしんであり、闘う道具は意志である勇気だ。

理解したなら死に向かって巡礼を開始しろ。生け贄はおまえであり、捧げられる供物もおまえだ。覚悟をもち、誰からも感謝を要求することあたわぬ旅であるが、奉仕できることじたいの喜びを唯一の報酬と思え。やがて、報酬など微塵も思いのおよばぬ境地がおまえを引きさらうことになる。なぜなら、最後の試練としておまえが見ることになる恐怖、遙かなる言葉で「敷居の従者」と呼ばれたものに打ち勝つのもまた、勇気でしかないのだから。

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コメント

  • コメント (2)

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    • Aki
    • 2018年 11月 03日

    私は人を信用しない事にしてます。
    信用したあとの裏切られた時の苦痛。
    その時は苦痛だけども…

    あとから日が経つと
    そういう人間だったのかと
    残念になると言うか幻滅してしまい、

    人を信用する前の
    自分自身が人の見極め方を
    しっかり持っていきたいと思いました。

    • Author
    • 2018年 11月 04日

    おそらく長くなるので、次の記事にて感じたことを書かせていただきます。

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