存在

いつも少年黙ってる。生まれてこのかた言葉がない。
年の頃なら六つか七つ。
小さなからだで峻厳な山のぼってく。
崖の淵にて腰おろし、朝から晩まで空の一点みつめてる。

学校へ行きなと社会がいった。
彼は黙って社会をすぎた。
年がら年中、山をのぼって崖に座り、
谷の闇も空の青も、ともにひとしく愛してた。

鳥たちは生き、大気と少年同じく見た。
雨や雷は生き、彼とおのれを等しく見た。
いつも同じ服、半袖に半ズボン。
季節のなかすら、おのれの色彩うめこんだ。

いつも少年黙ってた。
親も他人も唖だと思って悲しんだ。
誰とも目を合わさなかった。
親も他人も聾だと思って悲しんだ。

彼は成長しなかった。
十年、二十年、姿が子供のままだった。
食べ物あっても口にいれたの一度もない。
特別なんだと人間さわぎ、崖には人々ひしめいた。

あるとき彼は身を投げた。座ったままで落ちてった。
人間あわてて谷底探すも彼のすがたは消えたまま。
子供のままで死んでった。
親も他人もみんなが嘆き、少年それ見て黙ってた。

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