悪魔払い

犬が月に吠えるとき、無知ゆえの空しさにぼくらは嘆く。
声は届かず、期待する反応はない。
犬は怒りをおぼえて、歯をむき出しにし、疲れ果てるまで、獣性にとり憑かれる。

暴徒が国に吠えるとき、手段の過ちゆえにぼくらは嘆く。
声は届かず、期待する反応はない。
暴徒は怒りをおぼえて、集団の怒れる波に乗り、間違いに気づくまで、暴力にとり憑かれる。

哲学者が紙に吠えるとき、純粋さが解釈により歪められ、ぼくらは嘆く。
声は届かず、期待する反応はない。
哲学者は怒りをおぼえて、狂的な思想に傾き、錯覚に気づくまで、自分の檻に閉じ込められる。

一方で、自然の生命たちが喜びの歌をうたっていた。
緑の山はほほえみ、青の風は冗談をとばし、黄色い小鳥は笑い転げ、白の小川は歓喜にあふれていた。
ひとりの老人が杖で身を支えながら、これら自然の顔と情景を見て、感じ、一緒になって愉快に遊んでいた。

「あの老人はボケている、一人で勝手にはしゃいでいる」

遠くから、三人の子供が指をさし、嗤いながら父親に言った。
父親は老人を見た。そして子供たちが、もはや子供ではないことを知った。
それから家の扉に錠を下ろし、二度と三人を家に入れることはなかった。

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コメント

  • コメント (2)

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    • 高瀬
    • 2018年 10月 28日

    3人の子供に指をさされ「ボケている、1人で勝手にはしゃいでいる」と言われた老人はどう思ったでしょうか。また二度と家に入れなくした父親をどう見るでしょうか。教えて頂きたいです。

      • Author
      • 2018年 10月 28日

      三人にとって老人に見えただけかもしれません。
      少なくとも老人がなにかを思うことはないと思います。

      そして、父親が三人を入れなくしたのではなく、
      三人が家に入る条件を失ったため、鍵をかけざるを得なかったのだと思います。

      父親は、家を守る必要がありました。他にも家族がいたでしょう。
      しかし、扉をひらく準備はつねにできていたはずです。

      三人がそろって、扉を開けてもらう条件を受け入れなかったのだと思います。

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