災い

黒い喪服を着た少女が墓から帰っていく。
寒気のする夜中、月は雲にかくれている。
小さな顔はヴェールに覆われて、うつむきかげんのままだ。
足音が変なのは、少女の片足が引きずりぎみになっているから。

黒い喪服を着た少女が墓から帰っていく。
顔は喜びにみち、歓喜の涙が黒ずんだ魂をうるおしている。
愉悦の歌は疫病となり、周りの死者を焚きつけだした。
やがて、少女の口から鉛色の腕が伸びてきて、掴んでいる魂を外に放り投げた。

黒い喪服を着た少女が墓へとやってくる。
得体のしれない黒いかたまりが、抜け殻となった小さな体に住んでいる。
わたしは白い法衣に袖を通し、少女の魂を拾いあげ、彼女の前に躍り出た。
少女の口は、呪いの糸により、上唇と下唇が縫い閉ざされていた。

黒い喪服を着た少女が墓へとやってくる。
握りしめていた魂はまだ熱をもっていた。
愛情をこめ、時間をかけて磨き上げたころ、ちょうど水晶のように、
そこに映っていたのは、少女が憎んだ男の顔、わたしの顔だった。

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コメント

  • コメント (1)

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    • 高瀬
    • 2018年 10月 26日

    一度読んで
    もう一度読み終えた時、自分の頬が涙で濡れました。

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