1. 存在

    いつも少年黙ってる。生まれてこのかた言葉がない。年の頃なら六つか七つ。小さなからだで峻厳な山のぼってく。崖の淵にて腰おろし、朝から晩まで空の一点みつ…

  2. ある老夫婦の会話

    山の藁屋に住む老婆が、扉の外で、椅子に腰かけている。孫娘は、花を摘みに、たくさんの友達がいる谷へとおりてゆく。老婆はいった。「しばしのお別れだ。…

  3. 悪魔払い

    犬が月に吠えるとき、無知ゆえの空しさにぼくらは嘆く。声は届かず、期待する反応はない。犬は怒りをおぼえて、歯をむき出しにし、疲れ果てるまで、獣性にとり憑か…

  4. 災い

    黒い喪服を着た少女が墓から帰っていく。寒気のする夜中、月は雲にかくれている。小さな顔はヴェールに覆われて、うつむきかげんのままだ。足音が変なのは、少…

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