ふたりの合一

この男は出会いを求めていた。孤独を感じ、寂しさを感じ、癒やしを求めていた。男女の愛に飢え、運命的と信ずるに値する女を探し、活用できるいかなるツールに対しても大金を厭わず、常人ならざる入れ込みようで日々に臨んでいたが、ついにはひとりの女に視点がさだまり、その美しさに惹かれ、惚れ込み、「真剣なお付き合い」と称してアプローチを続けた。女のハートという門戸を叩くその熱心さはとうとう女の反応を引き寄せ、互いに惹かれ合うという段階へと押し上げた。日々に愛欲は重ねられ、互いに離れられぬ依存を形成し合い、やがて結婚という誓約でひとつの区切りを得るに至った。

女が子供を産むや、その奇跡めいた可愛らしさにしばし我を忘れていたが、やがて女と感じられぬ嫁に嫌気が差すようになる。子も育つ。生意気な反抗にはストレスを感じ、繰り返される日々の仕事には虚無と苛立ちを覚えた。家庭の枠内でこき使われるおのれがみじめに思えてきた。この男はふたたび孤絶の癒やしへ走るようになる。女である。かつて愛を誓った嫁に隠れて女を漁り、ときには肉体のかたちで選び、ときには精神的な相性で選び、やがてこれぞ本物の愛と感じる女と出会うに至る。女の方もこの関係を壊されるわけにはゆかず、男の家庭を壊すことに心を砕き、かくして不倫は常習化し、嫁子供との関係は断絶、金で解決できる安易な離婚を経て、再婚という新たなる旅路、胸躍る体験へと没入していくのである。

そのかたわら、会社の同僚に別の男がいた。物静かな性質で特に目立つような人間ではない。飲みに誘っても断る。ゴルフはどうだ。やらない。女は。競馬は。家庭があるので。といったスタンスである。何が楽しみで生きているのかと、会社の男たちからは嘲りをもって応じられるもわれ関せず。

この静かな男は内なる出会いに熱心であり、都会の喧騒にあっておのれの純血を守り、瞑想という万人に与えられた無料のツールを用いて、真剣このうえないアプローチによって、内なる門戸を叩きつづけていた。自分の内側に感じるのとひとしく、あらゆる人間にもその内在的な箇所でつながるものだから、愛のみを感じざるをえなかった。内的な愛の合一が無限に美しいあまり、目に見える世界もすべてが美しく完璧だった。したがって、同僚たち、あるいは家庭、社会環境といったものが心を砕く、いかなる破壊的な誘惑にも反応することがなかった。ときには思考、ときには感情と、目移りすることはできなかった。彼が見ていたのは現象ではなく生命だったからである。この没入と合一の門を、彼は嘘いつわりない真摯の意志によりこじ開けたが、みぢかな人間の誰をも、ともに連れゆくことはできなかった。

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