幸福

三木清の幸福論

幸福とはなにか、というテーマのリクエストによる記事です。
高瀬様が引用された三木清の「人生論ノート」における抜粋を改めて見てみましょう。

「幸福は人格である。人が外套を脱ぎすてるように、いつでも気楽にほかの幸福は脱ぎすてることのできる者が最も幸福な人である。しかし真の幸福は彼はこれを捨て去らないし、捨て去ることもできない。この幸福をもって彼はあらゆる困難と闘うのである。幸福を武器として闘う者のみが斃れてもなお幸福である」(三木清)

私は三木清の名前しか知りません。この、いくつか解釈を持ちうる断片的な文章のみにて、私の解釈に沿って話を進めるべきでしょうか。彼の言わんとしたであろう思想に私の解釈をいれるべきでしょうか。その両方でしょうか。あるいは、直接的に「幸福」に対する私見を述べたほうがよいのでしょうか。すべては交錯し、ひとつにまとまるかもしれません。

はじめに、思想は牢獄ではないでしょうか。情緒的な人間が幸福を一種の玩具と見なすように、それは知的な人間が好むひとつの玩具です。また玩具は段階と拘束を要求します。そして最終の段階にて玩具は捨てられ、より以上の玩具は存在しなくなります。

「幸福は人格である」とあります。幸福は人の性質に依存するという意味でしょうか。この解釈で話を進めます。もしそうであるとき、「不幸は人格である」と読み替えることができます。これらは次のことを意味するでしょう。幸福があるとき不幸があり、幸福があるため不幸があり、また逆もしかり。幸福と不幸は「人格」によって一過性のものとなり、その合間の限定にて、着たり「脱ぎ捨て」たりできる、たえず変動する個人的なものと確定されます。

「しかし真の幸福は彼はこれを捨て去らないし、捨て去ることもできない」とあります。このとき幸福は、先の「人格」の定義を越えたのではないでしょうか。幸不幸が左右される原因であった「人格」から、より異質の、永遠なるもの、実在でありうるものの代名詞へと超越したのではないでしょうか。

この幸福から私たちは目を背けています。外の世界における一過的な幸福という感覚に目くらましを受けているのです。私たちは何を手に入れようと、幸福であるための満足感が永続しないことを知っています。そして、幸福と満足を求めたがために、反動でしかない不幸と苦痛の時期が来ることを知っています。それでも私たちは、深く考えないようにし、現実を見ることを拒み、いわば偽の幸福を追い続け、その玩具を受け取るにふさわしい偽の「人格」であり続けています。そして言うのです。それが人生だと。

三木清は「そうではない」と言いたかったのだと思います。「真の幸福」を受け取るにふさわしい真の「人格」たれと。そのとき、私たちは幸福を分かち合う者であり、幸福のために、打ち破られることのない「真の幸福」を盾に「困難と闘い」、その超越的な幸福を「武器として」、わたしたち自身にほかならない人類のために闘い、一時的な個人は「斃れてもなお」、二度と私から、そして私たちから「真の幸福」が奪い取られることはないと。




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コメント

  • コメント (3)

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    • 高瀬
    • 2018年 11月 06日

    リクエストにお応え頂きありがとうございます。

    人々は、欲求を追い求め、それを成し得るために他人を裏切り傷つける事もあると思います。そこまでして得た幸福(もはやそれを幸福とよんでいいのか…)は一時的なものであって、さらに錯覚的なものということでしょうか。

    人生の『幸福』と『苦痛』を天秤にかけたとき、それらは一直線になるのかもしれない。

      • Author
      • 2018年 11月 06日

      いえ、すべての幸福が一時的です。不幸も一時的です。
      幸福や不幸は個人的なことであり、個人的なことはすべて一時的です。
      誰にとっての幸不幸なのか、という問いへの探求がもっとも重要なことだと思います。
      次の記事に書いてみます。

    • 高瀬
    • 2018年 11月 06日

    ありがとうございます。
    個人的なことはすべて一時的という言葉に少しホッとしています。

    Authorさんは自分の利益、自己満足で、このブログをされているのではなく、本当に苦しんでいる人々を助けたいというお気持ちが伝わり、その親切なご対応も、皆平等に接して下さることに心から信頼しております。

    私からすれば、このブログランキングに突如現れた救世主といった感じですよ^ – ^

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